本記事では、今後の投資銘柄選定や、類似銘柄の株価動向予測やパターン分析などに参考にする為に個人的に気になる企業や市場参加者の注目度が高い企業の「決算結果」、「決算発表後の株価の動き」等について纏めています。
2020年9月に、錚々たる主幹事証券、ベンチャーキャピタルの後ろ盾を受けながら、満を持してナスダックに上場した グッドアールエックス(GDRX)。
米国大統領選挙を終え、さらに、バイオンテック/ファイザー連合の新型コロナウイルスワクチンのポジティブニュースにより米国10年債利回りが急騰。
グロース株などが軒並み売り込まれる荒れた相場環境の中で、グッドアールエックス(GDRX)はIPO後初の決算となる2020年第3四半期決算を発表しました。
そして、決算発表の数日後にはAmazonによる市場参入、Amazon Pharmacyの発表があり、衝撃が走りました。
そんなグッドアールエックス(GDRX))の「2020年第3四半期決算内容」や「決算前後の株価の動き」はどうだったのでしょうか?
本記事では、グッドアールエックス(GDRX)の2020年第3四半期決算結果と決算内容、株価の値動きについてついて纏めています。グッドアールエックス(GDRX)の一連のムーブメントが今後の株式投資の判断材料として少しでも参考になれば幸いです。
グッドアールエックス(GDRX)のビジネスモデルとユーザー評価
グッドアールエックス(GDRX)の決算結果を見ていく前に、簡単にグッドアールエックス(GDRX)のビジネスモデルやユーザー評価等について確認ておきましょう。
グッドアールエックス(GDRX)はスマホアプリ上で処方箋薬価の比較検索が可能なプラットフォームを提供し、消費者は同じ薬でも一番薬価の安い薬局をスマホの位置情報から確認し、処方箋薬価のディスカウントクーポンを利用する事で最安値で薬を購入できるサービスを提供しています。
これがグッドアールエックス(GDRX)のコアビジネスに該当するのですが、その他にも4つのビジネスを展開しています。
<出典:GoodRX資料>
コアビジネスは売上の約90%を占めるPrescripitionサービスのGoodRXですが、SubscripitonモデルとしてGoodRX Goldや遠隔医療サービスのheydoctorなど、多面的なアプローチを行い、コアビジネスを補強するような活動をしています。
例えば、グッドアールエックス(GDRX)のリサーチによると、約20%の消費者は処方箋を持っていないケースがあり、その場合、Heydoctorを通じて遠隔医療診断を受けた上で薬を処方してもらい、ユーザーをコアビジネスのGoodRXのプラットフォームに繋げる事で、ユーザーがディスカウントコードを利用したり、最安店で薬の受け取りができるような流れを構築しています。
さらに、グッドアールエックス(GDRX)が提供しているプラットフォームはエンドユーザーから極めて高い評価を受けています。
NPS(Net Promoter Score)を見るとその凄さは一目瞭然です。
<出典:GoodRX資料>
我々になじみのあるGoogle、Disney、Amazon、NetflixのNPSスコアが50~64なのに対し、グッドアールエックス(GDRX)のNPSは脅威の90を記録しています。
日本では薬局毎に薬価が異なる事はないのであまりピンときませんが、アメリカでは絶大な人気を誇り、日常生活に欠かせないサービスの1つになっています。
グッドアールエクスの魅力や特徴について、詳しくは下記の記事に纏めています。
>>>【米国のIPO2020年優良銘柄】 グッドアールエックス(GDRX)の魅力
本記事では、米国で2020年にIPOされたグッドアールエックス(GDRX)について、私が調べた情報を備忘目的で記事に纏めています。 【想定読者】 株式投資初心者・米国株投資初心者・これから株式投資を[…]
それでは、具体的に、グッドアールエックス(GDRX)の決算内容を見ていきましょう。
コアビジネスとそれ以外のビジネスの売上比率や成長率などを分けてみると、実態が見えてきます。
グッドアールエックス(GDRX)の決算結果:2020年第3四半期の決算内容
グッドアールエックス(GDRX)のIPO後初の決算は、良好、いわゆる好決算でした。
内容について3つに分けてみていきましょう。
- 2020年第3四半期決算結果とガイダンス
- Financial Data
- 四半期毎の売上推移
1つず見ていきましょう。
グッドアールエックス(GDRX)の決算結果①: 2020年第3四半期決算結果とガイダンス
グッドアールエックス(GDRX)の売上高とEPS結果とコンセンサス予想は下記の通りです。
第3四半期 | 予想 | 結果 |
EPS | $▲0.21 | $▲0.12 |
売上 | $135M | $140.4M |
売上高、EPS共にコンセンサス予想を上回る結果で、売上高成長率も前年同期比+38%と伸びています。
2020年Q4ガイダンスと通年ガイダンスは売上高が$148M、$545Mとなっています。
<出典:GoodRX Shareholders letter>
>>>米国株のガイダンスの調べ方と重要性を徹底解説~グロース株投資家必見~
米国株のガイダンスの調べ方を知りたい 決算発表の時に、ガイダンスはどこを見れば良い? そんな疑問に答えます。 【想定読者】 株式投資初心者・米国株投資初心者・[…]
グッドアールエックス(GDRX)の決算結果②: 2020年第3四半期のFinancial Data
<出典:GoodRX Shareholders letter>
2020年第3四半期のFinancialデータを見ていきます。
全ビジネスの総売上高は、$140M(000)と、前年同期比+38%とトップラインは大きく成長しています。
一方で、「黒字化が売り」のグッドアールエックス(GDRX)ですが、2020年第3四半期はNet Loss(純損失)▲$50M(前年同期比▲355%)を計上しています。理由は、$105.9Mが役員向けのストックオプション報酬として割り当てられているからです。
ただ、ストックオプション報酬用にキャッシュアウトがあっても、営業キャッシュフローは前年同期比で2倍近い水準となっています。
グッドアールエックス(GDRX)の決算結果③: 四半期事の売上推移
<出典:GoodRX Shareholders letterの数字を基に筆者作成>
上記グラフは、2019年Q1から2020年Q3までの四半期毎の売上推移とコアビジネス(Prescription)の売上割合の推移です。
売上はキレイな右肩上がりで推移しています。売上の内訳を見ると、Prescription Businessが約90%を占めている事が確認できますが、2020年に入ってからPrescription Businessへの依存度を徐々に下げ始め、第3四半期には88.5%まで低下しています。
一方で、サブスクリプションビジネスやTelehealthビジネスなどが含まれるその他ビジネスの売上割合は、全体の10%強と、ポーションはまだ小さいものの2020年第3四半期売上高は、$16.1Mと前年同期比+170%と大きく成長しています。
依存度を下げているとはいえ、コアビジネスであるPrescriptionの2020年第3四半期売上高は$124.4Mと、前年同期比で+30%成長しています。売上に直結するプラットフォームのユーザー数が増えた為です。
KPIであるMonthly Active User数を見ると、前年同期比で+29%増加し、四半期ベースでは過去最高のユーザー数4.9M人を達成しています。
<出典:GoodRX Shareholders letter>
上記グラフのように、ユーザー数は右肩上がりで着実に増えていますが、1点気になる点もあります。新型コロナウイルスの影響です。
2020年Q2四半期は新型コロナウイルス感染拡大を受け、外出自粛やロックダウンによりユーザー数が一時的に減少しています。
2020年11月現在、再度、新型コロナウイルス感染者数が増加傾向にある事から、今後もCOVID-19の影響による外出制限やロックダウンなどが起こった場合、一時的にMonthly Active User数が減少するリスクはあるかと思います。
グッドアールエックス(GDRX)は、コロナ禍という直接薬局に足を運ぶ事が難しい状況を想定している為、SubscriptionビジネスのGoodRx Goldのユーザーエクスペリエンス向上を重視しています。
その1つの対策として、処方薬を郵送するサービス、メールオーダーサービスを開始したようです。さらに、オンライン遠隔医療サービスのHeyDoctorをアメリカ全土、50州に拡大。2020年UCSF Digital Health Awardsにおいて‘Best Telehealth Company’ にも選出され、ユーザー評価も期待できそうです。
グッドアールエックス(GDRX)の決算前後の株価の動き
グッドアールエックス(GDRX)の決算前後の株価の動きを見ていきましょう。
下記のチャートは9月23日の上場から11月19日までのグッドアールエックス(GDRX)の株価推移です。
<出典: TradingView>
IPO直後はパーン!と上振れし、その後は、下落傾向にあり、何となく2020年にIPOしたロイヤリティファーマ(RPRX)やズームインフォ(ZI)と似たような動きを見せているような気がします。
期待感は高く、好決算は出してもなかなか株価には反映されないという状況です。特に決算後は全く冴えていません。
決算後にグッドアールエックス(GDRX)が株価を下げた原因は主に2つです。
- 新型コロナウイルスワクチン完成期待
- Amazonの薬局ビジネス参入ニュース
1つずつ見ていきましょう。
グッドアールエックス(GDRX)が好決算後に株価を下げた原因①: 新型コロナウイルスワクチン完成期待
グッドアールエックス(GDRX)の決算は11月13日でしたが、決算発表を控えた11月9日にマーケットに大きな変化を与えたBig Newsも少なからず影響しているかもしれません。
mRNA技術に基づく新型コロナウイルスワクチンを開発しているバイオンテック/ファイザー連合の第3相臨床試験データについてファイザーから「ワクチン接種開始後28日で90%以上の感染予防効果がある」との報道です。
ファイザーとバイオンテックのmRNA COVID-19ワクチン。第3相治験の中間解析 (4万人弱の被験者が2回接種、ワクチンもしくはプラセボ接種後発症したCOVID-19の94症例を追跡) で接種開始後28日で90%を上回る感染予防効果を認めた。
人類のウイルスとの戦いの歴史で大きな成果!https://t.co/W0aZueGj2m— BiotechMania (@BiotechMania) November 9, 2020
あくまでも企業側のニュースリリースであり、FDAによるワクチン承認が確定された訳ではないのですが、このニュースを受け、まるでワクチンが承認されたかのように米国債10年利回りは急上昇。金利上昇によりグロース株は叩き売られました。
グッドアールエックス(GDRX)はグロース株のような売り圧力はありませんでしたが、マーケットは資金を動かしにくい状況にあるので、好決算だったものの、残念ながらグッドアールエックス(GDRX)の株価は軟調に推移しました。
https://twitter.com/twin_papariman/status/1327241003317673990?s=20
グッドアールエックス(GDRX)が好決算後に株価を下げた原因②: Amazonの薬局ビジネス参入ニュース
グッドアールエックス(GDRX)の好決算ニュースを受け、安堵をしていた矢先にポロッと出てきたニュースが株価に衝撃を与えました。
Amazonの薬局ビジネスへの参入です。
市場にAmazonが参入したから「既存企業はすべて排除される」という思い込みは持たないようにした方が良さそうですが、株式市場はビッグネームの参入に大きく反応しています。
Amazonニュースを受け、グッドアールエックス(GDRX)の株価は暴落しました。
https://twitter.com/twin_papariman/status/1328859216044441600?s=20
また、さらに、JP MoarganはAmazon Pharmacyのニュース発表後に、グッドアールエックス(GDRX)の株価目標を$29にダウングレード。
<出典:Seeking alpha>
さらに、Deutsche Bankも株価を$50から$31に下方修正しています。
グッドアールエックス(GDRX)のメインビジネスとAmazon Pharmacyは直接的な競合関係にはないとはいえ、Amazonという巨人の市場参入によるビジネスへの影響度の不安が払拭できない以上、当面は株価は軟調推移するかもしれません。
グッドアールエクス(GDRX)とAmazon Pharmacyの関係は?
グッドアールエックス(GDRX)はこのままAmazonに飲み込まれてしまうのでしょうか?
簡単にAmazon Pharmacyの特徴を確認してみます。
Amazon Pharmacyのサービス利用対象は、Amazonプライム会員に限定されます。Amazon プライム会員はオフラインで行っている薬局での行動をスマホやPCなどの端末からオンライン上で完結させる事ができ、ジェネリック医薬品で最大80%OFFの節約が可能になります。また、全米に50,000拠点ある薬局でも適用されます。なお、薬の郵送には2日かかる模様です。
<出典:businesswire>
Amazon Pharmacyはオンライン上での処方箋購入と郵送サービスなので、グッドアールエックス(GDRX)のコアビジネス(Prescription)とは直接的な競合関係にはあたりません。ただ、グッドアールエックス(GDRX)がこれから強化していこうとしていたオンラインビジネスはなかなか厳しいかもしれません。
とはいえ、例えば、Amazonが展開するハンドメイド向けのマーケットプレイス「Handmade at Amazon」は、もろにETSYと競合していますが、ETSYの牙城を崩せていませんし、動画配信サービスのAmazon Primeビデオがあるから、NetflixやHuluを使わなくなるか?というと、そうではありません。
まだ、IPO後1回目の決算が終わったばかりなので、今の段階でグッドアールエックス(GDRX)に見切りをつけるのは早計だと思うので、2回目、3回目の決算を見てからInしても遅くはないのかなと思います。
グッドアールエックス(GDRX)のIPO後初決算と株価推移~2020年第3四半期決算結果は?~ : まとめ
グッドアールエックス(GDRX)のIPO後初決算と株価推移について見てきました。
簡単に振り返ってみましょう。
IPO後初の決算となったグッドアールエックス(GDRX)の2020年第3四半期決算は無事にクリアしました。
全体の売上高は右肩上がりで着実に成長を見せ、メイン事業のPrescriptionは四半期のMonthly Active Consumer(ユーザー)数が過去最高を記録した事で、前年同期比で約+30%の成長をしています。
一方で、新型コロナ感染拡大が再燃している事もあり、再度、外出制限やロックダウンが起こった場合は、2020年第2四半期のように一時的にユーザー数の減少が売上減に影響してくる懸念があります。
ただ、グッドアールエックス(GDRX)はそうした懸念を予め想定し、Prescriptionビジネスの売上依存度を段階的に下げる為、Subscriptionビジネス、遠隔医療ビジネスに力を入れている状況です。
そんな矢先にAmazonがAmazon Pharmacyを発表。
グッドアールエックス(GDRX)のメインビジネスとは競合関係にはあたりませんが、グッドアールエックス(GDRX)の業績へ与える影響の先行き不透明感から株価は暴落。
Amazonという巨人の市場参入のインパクトが大きい事やJP.Morganなども目標株価のダウングレードを発表している事からも、株価的にはしばらくは軟調局面が続きそう。
ただ、メインビジネスのユーザー評価は圧倒的に高く、業績も良いので、2回目、3回目以降の決算を見守っていきたいと思います。
>>>グッドアールエックス(GDRX)の2020年Q4/通年決算結果~株価の上昇はまだまだ先か?~
本記事では、今後の投資銘柄選定や、類似銘柄の株価動向予測やパターン分析などに参考にする為に個人的に気になる企業や市場参加者の注目度が高い企業の「決算結果」、「決算発表後の株価の動き」等について纏めています。 &nb[…]
以上、グッドアールエックス(GDRX)のIPO後初決算と株価推移~2020年第3四半期決算結果は?~でした!!