本記事では、米国で2021年中に上場予定のコインベース(COIN)について、私が調べた情報を備忘目的で記事に纏めています。
昨年から上場の噂が絶えなかったコインベース(COIN)は、2021年2月末にForm S-1を提出しました。
コインベース(COIN)のForm S-1を踏まえ、コインベース(COIN)の売上や利益のスナップショットや事業の先行きを予測する上での重要指標などについて内容を纏めています。
本記事を読む事で、コインベース(COIN)の現状と今後や将来のコインベースの業績へ影響する要因を理解する事ができます。
コインベース(COIN)とは?:2021年上場予定の米国大手フィンテック企業
コインベース(COIN)は世界100ヵ国以上の国、地域で仮想通貨の取引サービスを展開する米国の大手仮想通貨取引所であり、フィンテック企業です。
米国では、アプリを通じて株式や暗号通貨の売買が手軽にできる「ロビンフッド」が既にブームになっており、2021年中にロビンフッドも米国株式市場への上場が予定されていますが、ロビンフッド以上に市場で注目されているのが「コインベース(COIN) 」です
コインベース(COIN) は2012年に設立され、上場前の時価総額は既に$10億ドルを超えるユニコーン企業として2021年に満を持してナスダックに上場を予定しています。
コインベース(COIN)は2021年2月末にForm S-1をSEC(米国証券取引委員会)に提出。
S-1公開時点の情報によれば、コインベース(COIN) は既に4300万以上の口座を開設しており、ユーザーの預かり総資産は約9兆円。
日本の最大の仮想通貨取引所であるビットフライヤー(bitFlyer)の預かり総資産は約0.3兆円なので、コインベース(COIN)の規模の大きさはケタ違いとなっています。
コインベース(COIN) の2020年売上高は$1.28Bと、2019年の売上高の$533Mから2倍以上の売上高成長を達成。また、2019年は▲$0.3Mの赤字だったものの2020年は$322Mの黒字化を達成しており、上場前に黒字化している数少ない企業のうちの1つとなります。
また、コインベース(COIN)は既に日本でも事業を展開。日本仮想通貨交換業協会に加入していたり、三菱UFJフィナンシャルグループとも連携している事から、日本でも馴染みのある存在となりつつあります。
ビットコインが2020年に4年に一度の半減期を迎え、さらに2021年3月にビットコイン価格は$650万という最高値を更新した事から、再び仮想通貨市場に注目が集まっています。そんな中で、「世界最大規模の仮想通貨取引所が上場する」という事もあり、コインベース(COIN)の上場は2021年で最も話題になる可能性が高くなっています。
コインベースは上場に向けS-1を提出済み
<出典:コインベースの公式HP>
コインベース(COIN)は上場に向け、2021年2月25日にFormS-1をSEC(米国証券取引委員会に提出する証券登録届出書)を提出した事を発表しています。
これにより、コインベース(COIN)は米国の主要な仮想通貨取引所として初めての上場企業となります。
具体的な上場日程はまだ明らかにされていませんが、現段階で分かる情報としては下記の通りです。
上場方法 | ダイレクトリスティング |
ティッカーシンボル | COIN |
市場 | ナスダック |
上場支援企業 | ゴールドマンサックス JPモルガン アレンアンドカンパニー シティグループ |
コインベース(COIN)はナスダックへの上場を予定しており、ティッカーシンボルはCOINとなります。
コインベース(COIN)は、IPOのように新規株式を発行しないダイレクトリスティングにて上場予定です。
IPOの場合、通常、上場後6か月間はロックアップにより、既存株主は所有する株式の売却ができません。その為、ロックアップ解除後は、一定の売りが出るため、株価が下がる傾向が強くなりますが、コインベースの上場手法の場合は、そうした懸念はありません。
コインベース(COIN)の上場を支援するのは、ゴールドマンサックス、JPモルガン、シティグループなどの一流の投資銀行です。
コインベース(COIN)が提出したS-1の内容から、コインベース(COIN)の現状や特徴についてもう少し具体的にみていきましょう。
コインベース(COIN)の売上と利益のスナップショット
<出典:コインベースのForm S-1>
まずは、コインベース(COIN)のビジネスが上手くいっているのかどうか、売上と利益をスナップショットみてみましょう。
コインベース(COIN) の2020年売上高は$1.28B、利益は$322Mとなっています。
上場時点で黒字化している米国企業は、2020年にIPOで米国市場に上場した銘柄の中ではロイヤリティファーマ(RPRX)やグッドアールエックス(GDRX)が有名ですが、上場前から既に利益を出している企業は極めて異例です。
ポイントは、「仮想通貨」というボラティリティの高い市場において、コインベース(COIN)が2020年のような売上や利益を継続的に上げ続けられるかどうかです。
具体的に見ていきましょう。
コインベース(COIN)の売上の約90%は取引手数料収入
<出典:コインベースのForm S-1>
コインベース(COIN)の売上の内訳をみてみましょう。
コインベース(COIN)の売上の源泉と比率は下記の通りです。
Yr.2020 | Yr.2019 | |
【1】 Transaction Revenue(取引手数料収入) | 85.8% | 86.7% |
【2】 Subscription and services revenue(サブスクサービス収入) | 3.5% | 3.7% |
【3】 Other revenue(その他の収入) | 10.7% | 9.5% |
最も重要なのはTransaction Revenue(取引手数料収入)です。
取引手数料収入の1本足打法から抜け出す為に数年前からサブスクサービスを始めていいますが、サブスク収入の成長率は高いものの、売上比率でみると、取引手数料収入を補えるほどの規模にはなっていない状況です。
コインベース(COIN)の売上を支える屋台骨であるTransaction Revenue(取引手数料収入)は、コインベース(COIN)が預かっている顧客資産の中から、顧客が実際に取引した量(Trade Volume)に応じて得る手数料となっています。
Transaction Revenueを左右する重要な指標をみていきましょう。
コインベース(COIN)の売上を左右する重要指標3つ
<出典:コインベースのForm S-1>
コインベース(COIN)の売上を左右する重要指標は主に3つあります。
- ユーザー数(Verified Users)
- 預かり総資産(Assets On Platform)
- 取引量(Trading Volume)
この3つが総売上の約90%に相当するTransaction Revenue(取引手数料収入)の増減に大きく影響してきます。
Form S-1を見ると、ユーザー数、預かり総資産、取引量ともに前年と比較し、大きく伸びている事が分かります。
また、「ユーザー」や「取引量」の増減は、仮想通貨市場全体のモメンタム、とりわけビットコインやイーサリアムなどの主要な仮想通貨の価格によって大きく変わってきます。
コインベースの将来性は期待できるものの、仮想通貨市場の規模、仮想通貨市場参加者の数、仮想通貨市場参加者の取引ボリュームに左右されるビジネスモデルであるという事です。
コインベース(COIN)の重要指標は仮想通貨市場の時価総額と連動する
コインベース(COIN)の3つの重要指標は「仮想通貨市場の時価総額」と連動し、相関関係にあります。
つまり、現時点では、コインベース(COIN)のビジネスは仮想通貨市場全体の動向や成長次第といっても過言ではないという事です。
そして、仮想通貨市場という今までになかった市場におけるビジネスには、ポテンシャルと同時に多くの潜在リスクが潜んでいます。実際、コインベース(COIN)はS-1のRISK FACTORで約60ページにもわたりビジネスリスクを明記しています。
そうした前提を踏まえ、「コインベースの売上を左右する3つの重要指標と仮想通貨市場の時価総額がどのように連動しているのか」、Form S-1の中で提示されているデータを具体的見ていきましょう。
- 仮想通貨市場の時価総額とコインベース(COIN)ユーザー数
- 仮想通貨市場の時価総額とコインベース(COIN)の預かり総資産
- 仮想通貨市場の時価総額とコインベース(COIN)の取引量
順番にみていきます。
仮想通貨市場の時価総額とコインベース(COIN)重要指標①: ユーザー数
<出典:コインベースのForm S-1>
コインベース(COIN)ベースの重要指標1つ目であるユーザ数は、右肩上がりで伸びており、2020年Q4時点では4,300万人のユーザーを持っています。
そのうち毎月の約280万人がコインベース(COIN)を利用し、仮想通貨の保管や売買を行っています。
上記グラフでは、2018年Q1からのデータしかありませんが、2012年時点ではユーザー数は1.3万人しかいませんでした。つまり、2012年末からたったの7年間で、ユーザー数は1.3万人から4,300万人に増えている事になります。
こうしたユーザー数の伸びは、「仮想通貨市場全体の時価総額」に比例しています。
2012年末時点での仮想通貨全体の時価総額は約$500Mでしたが、2020年12月末までには$782Bとなっており、年平均成長率では+150%となる為、コインベース(COIN)のユーザー数の年平均成長率+170%とほぼ近しい数字になっています。
仮想通貨市場の時価総額とコインベース(COIN)重要指標②: 預かり総資産
<出典:コインベースのForm S-1>
コインベース(COIN)の重要指標2つ目で預かり総資産(Assets on Platform)と仮想通貨市場全体の時価総額の推移を見てみましょう。
預かり総資産は、顧客が仮想通貨売買などをする際のベース資金となり、取引手数料収入などの源泉となります。
上記グラフを見ると、「仮想通貨市場全体の時価総額の動き」と「コインベース(COIN)の預かり総資産」は見事に比例関係にある事が分かります。
実際、コインベース(COIN)は、S-1内で「コインベース(COIN)上で取り扱いのある暗号資産価格や数量、取引可能は暗号資産の種類が変化すると、特定の期間に資産が増減する可能性がある」と述べています。
例えば、グラフの中で2018年部分を見てみると、仮想通貨市場の時価総額が半分近くに落ちこんでおり、時価総額の減少と比例して、預かり総資産も減少している事が分かります。
2017年に最高値をつけてからビットコインとイーサリアムは大きく下落。その下落率は1年間でそれぞれ▲約74%と▲82%で、仮想通貨市場全体の時価総額▲80%減少しました。そして、同様の期間に、コインベース(COIN)の預かり資産は▲約73%減少しています。
とりわけ、ビットコインとイーサリアムの価格変動が仮想通貨市場およびコインベース(COIN)の預かり資産に与える影響は高い事が分かります
<出典:コインベースのForm S-1>
理由はコインベース(COIN)における「ビットコイン」と「イーサリアム」の預かり資産の割合が高い為です。
上記グラフが示すように、2019年末時点では「BTCが約70%、ETHが約9%」、2020年末時時点では「BTCが約70%、ETHが13%」と、2つの仮想通貨でコインベース(COIN)の預かり資産の約80%近くを占めています。
仮想通貨市場の時価総額とコインベース(COIN)重要指標③: 取引量
<出典:コインベースのForm S-1>
コインベース(COIN)の重要指標3つ目は、取引量です。
取引量は、約90%の売上を占める取引手数料収入に直接影響を与える重要指標の1つですが、「ビットコイン価格」と「仮想通貨のボラティリティー」の両方に大きく影響されます。
例えば、2020年にはビットコインが$7,000から$29,000に上昇した局面がありましたが、この期間にコインベース(COIN)の取引量は$80Bから$193Bに増加しています。
仮想通貨市場の上下動とコインベース(COIN)の取引量の相関関係を示しているのが上記のグラフです。
折れ線グラフは仮想通貨市場のボラティリティを示し、棒グラフは「個人投資家」及び「機関投資家」の取引量を示していますが、同じような動きをしているのが分かります。
「取引量の増加」に対して、「ボラティリティ」がマイルドになっている事が分かります。
その理由は、個人投資家による取引よりも機関投資家による取引が増えた為です。
2018年時点では、個人投資家による取引の方が多かった為、仮想通貨のボラティリティが高かったのですが、機関投資家の取引が増加するにつれ、取引量とビットコイン価格や仮想通貨のボラティリティーが低下している事がグラフから読み取れます。
また、「機関投資家による取引が増えた」という事は、仮想通貨が単なる「個人投資家による投機的な商品ではなくなった」事を意味します。市場に一定の安定感がもたらされてきている事になります。
ビットコイン(BTC)の価格上昇サイクル【重要】
<出典:コインベースのForm S-1>
最後に、ビットコイン(BTC)の価格上昇サイクルについて見てみましょう。
仮想通貨市場の成長を強く牽引しているビットコインですが、2010年以降、4つの「サイクル」が観測されています。
そのサイクルを示しているのが上記グラフです。
1回のサイクルは約2年~4年の期間で変動しており、そのサイクルの中で「ピーク」と「ボトム」が存在しています。
短期スパンで見ると、ビットコイン価格は▲30%、▲40%の調整をする局面がありますが、長期スパンで見ると、「右肩上がりで推移している」のがビットコインの特徴とも言えそうです。
コインベース(COIN)ベースにとって、ビットコイン価格の上昇は非常に重要です。ビットコイン価格上昇に伴う仮想通貨市場全体の成長が、コインベース(COIN)のユーザー数や取引量の増加に繋がり、強いては売上の約90%を占める取引手数料収入の増加に繋がってくるからです。
特に2020年は半減期だった為、その翌年にあたる2021年はビットコイン価格の大きな上昇が期待できます。
ビットコイン価格は近い将来、1000万円を超える可能性は十分にあり、早ければ年内に到達できる可能性も出てきています。
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コインベース(COIN)上場!その実態は?~【米国株】2021年大本命の仮想通貨取引所を上場前に調べてみた~:まとめ
コインベース(COIN)が提出したS-1に基づき、コインベースの実態について見てきました。
簡単に振り返っていきましょう。
コインベース(COIN)は、2021年中にナスダックにダイレクトリスティングに上場予定の米国大手仮想通貨取引所。
提出されたS-1によると、2020年の売上高は$1.28B、利益は$322Mと上場前に既に単年黒字化を達成。
ただ、売上の約90%は取引手数料収入に依存している状況で、屋台骨となっている取引手数料収入を変動させる重要指標は①ユーザー数、②預かり資産、③取引量の3つ。
そして、これらの重要指標は仮想通貨市場全体の時価総額やボラティリティに大きく影響されてきます。
特に主要な仮想通貨であるビットコインとイーサリアム価格は重要です。
2010年以降、ビットコイン価格は2年~4年サイクルの中で高値と底値を形成し、次のサイクルでは前回のサイクルの高値以上で推移している事が判明しています。
その為、過去のトレンドやサイクル通りに推移するのであれば、ビットコイン価格は短期間での調整を繰り返しながら、長期スパンでは右肩上がりに推移していく事が予想されます。
いずれにしても、ビットコインやイーサリアムといった主要な仮想通貨価格の上昇による仮想通貨市場全体の成長が将来のコインベース(COIN)のビジネスを左右する事になりそうです。
以上、コインベース(COIN)上場!その実態は?~【米国株】2021年大本命の仮想通貨取引所を上場前に調べてみた~でした!!