本記事では、米国株投資を実践する中で生じた疑問点や実際に起きた事例について、私自身が調べた情報を備忘目的で記事に纏めています。
本記事では、「アメリカのFOMCとは何か?」「2021年3月に開催されたFOMCの発表内容によるマーケットの反応はどうだったのか?」、「テーパリングとテーパータントラム」について、主に纏めています。
本記事を読むことで、米国株式市場に大きな影響を与えるFOMCが発表する内容や、発表内容を踏まえた株式市場の動き、過去に起きた出来事を踏まえた今後の見通しについて知る事ができます。本記事の内容を投資情報のデータベースとして、今後の投資判断の参考材料の1つとする事ができます。
【アメリカ】FOMCとは?
まず、そもそもFOMCとは何でしょうか?
アメリカではFOMCは年に8回開催され、主に「景気の現在地」と「政策金利などの方針」が発表される為、景気の先行き見通しや景気と連動した金融政策どうしていくのか?を知る事ができます。
方針を決定するのは、FRB理事7名と地区連銀総裁12名のうち、議決権を持つFRB理事7名と地区連銀総裁5名の12名です。
アメリカのFOMCが米国株式投資家にとって重要なのは、FOMCで決定された金融政策が発表された内容が、市場参加者の予想と異なった場合、株価が大きく動く事があるからです。
2021年3月のFOMCではどうようなメッセージが出されたのか?具体的に見ていきましょう。
アメリカのFOMCで2021年3月に発表された重要メッセージ
アメリカのFOMCで2021年3月に発表された重要メッセージは、「ゼロ金利政策」と「量的緩和は維持する」です。
2020年は新型コロナウイルスのパンデミックにより一気に景気が冷え込みましたが、景気刺激策や金融緩和による手当、ワクチン完成とワクチン接種開始を受けて、2021年の経済成長率は大きくリバウンドする事が予想されています。
6%を超える経済成長率は、約37年ぶりの水準です。
そして、「失業率見通し」と「インフレ率見通し」は下記のように予測しています。
失業率見通し | インフレ率見通し(PCE) | |
2021年 | 4.5% | 2.4% |
2022年 | 3.9% | 2% |
2023年 | 3.5% | 2.1% |
こうしたデータに基づき、アメリカのFOMCでは「ゼロ金利政策」と「量的緩和の維持」が決まり、パウエル議長によりメッセージが出されました。
「ゼロ金利政策」と「量的緩和の維持」はマーケット参加者の予想通りの結果でしたが、「この方針をいつまで続けるか?」が事前予想と異なっています。
マーケット参加者は、2023年中に利上げを1回行う事と米国でテーパリング(量的緩和縮小)の議論が開始する事を予想していました。
一方で、FRBのパウエル議長は下記を明言しました。
- 「ゼロ金利政策は、少なくとも2023年末まで維持する」
- 「量的緩和縮小については、話す時期ではない」
つまり、前倒しで利上げを行う予定はなく、昨年からの株高を引き起こしている「量的緩和の縮小については現時点では何も考えていない」という事です。
量的緩和縮小については、専門用語でテーパリングと言われていますが、「米国でテーパリングについてはまだ話す段階ではない」というメッセージを強く出したところは覚えておきたいところです。
アメリカのFOMC後の株価と米国長期金利の動き
アメリカのFOMC声明後の長期金利と株価の動きを見ていきましょう。
米国の10年債利回りの動きは下記の通りです。
2021年2月中旬頃から金利は急騰し、右肩上がりに上がっていましたが、FOMC後、長期金利は1,7%を超える動きを見せています。
その後、1.6%台に落ち着いたように見えましたが、再度1,7%台まで上昇しています。
S&P500とナスダックの動きを見ると、長期金利の上昇局面では指数は下落し、特に成長株が多く組み込まれているナスダック指数の下落幅の方が高い事が分かります。
長期金利と株価の動きはシーソーのような関係にある為、長期金利の上昇は特に高PERのハイパーグロース銘柄の株価下落に繋がってきます。
実際、2021年2月にも米国10年債利回りの急上昇により、ハイパーグロース株やテーマ株はひどくやられています。
>>>米国の長期金利上昇が与える影響は?~個別銘柄の株価の動きを徹底検証してみた~
本記事では、米国株投資を実践する中で生じた疑問点や実際に起きた事例について、私自身が調べた情報を備忘目的で記事に纏めています。 【想定読者】 株式投資初心者・米国株投資初心者・これから株式投資を検討している人&nb[…]
今後も長期金利の動向からは目が離せない展開が続きそうです。
また、FRBのパウエル議長は、「米国でテーパリングについてはまだ話す段階ではない」というメッセージを出したものの、市場参加者は半信半疑の状態です。
過去に起きた米国でのテーパータントラムによる株価下落の再来に警戒しているからです。
テーパータントラムとは?
テーパータントラムとは、量的緩和縮小に対し、市場・マーケット参加者が混乱を巻き起こした事象を指します。
テーパータントラムは本記事執筆時点から約8年前の2013年5月に起こりました。
当時 のFRB(米国連邦準備制度理事会)議長であった バーナンキが、市場の想定よりも早いタイミングで量的緩和の縮小を示唆しした事がきっかけとなり、長期金利の急騰、新興国通貨の下落などを招き、金融市場が混乱。別名「バーナンキ・ショック」と言われています。
2021年3月のFOMCでは、パウエル議長が米国でのテーパリングの可能性を否定しましたが、2021年に入ってから急速な景気回復を受けて長期金利の上昇スピードが速まり、さらに約30年ぶりの強気のGDP成長率が予想されている事からも、市場参加者のテーパリングへの警戒感は依然として高い状況にあります。
パウエル議長が「米国でテーパリングについては議論する時期ではない」とメッセージを出しているにも関わらず、量的緩和縮小のタイミングについて懐疑的な見方をしているマーケット参加者が多いのは、2013年に起きた「テーパータントラム」の再来への警戒感が強い為です。
市場の予想よりも早い段階で、量的緩和の縮小に対するシグナルが出された場合、2013年のテーパーパータントラムが再度起こる可能性が出てきます。
今後も定期的に開催されるFOMCでの景況判断や政策金利の方針などの発表内容には、注意する必要があります。
米国でテーパリングはいつ始まる?~FOMCの2021年3月の重要メッセージ~:まとめ
アメリカのFOMCで2021年3月に発表された重要内容について見てきました。
簡単に振り返っていきましょう。
2021年3月のFOMCでパウエル議長により発表された「ゼロ金利政策」と「量的緩和の維持」はマーケット参加者の事前予想通りの結果でした。
一方で、マーケット参加者の事前予想と異なったポイントは、「利上げとテーパリング開始時期」です。
マーケット参加者は、2023年中に利上げを1回行う事と米国でテーパリング(量的緩和縮小)の議論が開始する事を予想していましたが、パウエル議長は「ゼロ金利政策は、少なくとも2023年末まで維持する」、「テーパリングについては、議論する段階ではない」事を明言しました。
「米国ではテーパリングは時期尚早」という明確なメッセージが出されましたが、市場参加者は依然として半信半疑の状況です。
市場参加者の予想よりも早くテーパリング発表が行われた場合、2013年に起きたテーパータントラムによる株価暴落を警戒している為です。
長期金利は2月中旬から急上昇しており、2021年3月のFOMC終了後には1.7%台をつけ、金利と逆相関関係にある株、特にハイパーグロース株やテーマ株は株価が軟調な局面が続いています。
今後も、長期金利の動向やアメリカFOMCの発表内容に注視していきたいですね。
>>>米国経済状況は?FRBによるテーパリング開始はいよいよか?~2021年6月時点の現在地~
本記事は、2021年6月18日に開催された楽天証券セミナー「【ライブ配信】広瀬隆雄氏「乱高下の米株市場、コロナ後の相場の見通しと注目銘柄とは?」の内容を個人用のメモとして纏めたものになります。 […]
以上、米国でテーパリングはいつ始まる?~FOMCの2021年3月の重要メッセージ~でした!!